大友克洋『スチームボーイ』2004年/日本 @梅田三番街シネマ

よくない作品のよくない個所をダラダラ書き連ねても仕方ないが、大友はこの9年間何をしていたのだろうかとどうしても思ってしまう。公開前の売り物だった、映像技術も正直言って『イノセンス』の方が美しいし、手書きの『AKIRA』にも遠く及ばない。さらにその映像技術はともかく演出技術もかなりいいかげんで、例えば画面に向かって大きな物体が迫ってくる、というようなシーンを取っても、どの場面でも似たり寄ったりの演出で面白みが無い。この点でも『イノセンス』に大きく水をあけられている。そもそもこの作品に手書きではなくフルCGでやらなければならないような、その必要性がまったく感じられなかった。大目に観ても2、3カット程度。
大友はこの作品にもっと早く見切りをつけて漫画を描くべきだった。思えば『メトロポリス』などを観て、「これはあくまでも脚本を片手まで書いただけで、スチームボーイはこれと比べ物にならないほどすごいものに違いない」と勝手に思いこんでいたが、ある意味あの感想は作家大友自身にもっと向けられてしかるべきものだったのだろう。そしてこの『メトロポリス』にさえ『スチームボーイ』及ばないのである。