細田守『デジモンアドベンチャー』1999年、日本 をビデオで

ラヴェルの「ボレロ」を全篇にわたりフィーチャーし、既視感、デジャヴュとハイパーリアリティをかもし出す。
この小品の主題が夜のニュータウン(もう死語かも)に突如闖入してくるデジタルモンスター。だから、この圧倒的な非現実を非現実としてファンタジーとして、このように素晴らしく成立させるには、それ以外の要素を、徹底して、実写でやったほうがいいのではないかと思うくらい徹底して、緻密に描写することを試したこの作品は、はたして成功を収めている。
この非現実な小品が素晴らしいのは、その手間暇、水準の高い仕事の賜物によるものに違いない。アニメで緻密なリアリズムをやるのは、妹が泣きじゃくる表情からわかるようにある意味現実を越えた強度を伴う。
ファーストショット、モンスターの巨大さと恐ろしさをきちんと感じさせてくれる。これらも土台の街を細部に至るまで偏執狂的に描写しているから生まれるエモーションである。この小品はれっきとした怪獣映画として、決まっている。街の破壊の恐ろしさがきちんと伝わるのは街のディテイルが全体としては示されていないが、様々な生きたクロースアップが見事にできているからである。