アルフレッド・ヒッチコック『裏窓』

「宇宙のコントロールに成功した」ヒッチコック
ヒッチコックってやっぱり凄く上手いですよね。映像で語ることが。最初の数ショットでで台詞を一切つかわずに、舞台設定、主人公の紹介などをすらっとやってのける。
全篇通して何度もある、主人公の部屋から周りのアパートを見渡すショットが見事としか言いようが無い。
主人公の男はフォトグラファー。必然的に作品は彼の部屋の「裏窓」がスクリーンのメタファーになり、メタ映画の様相を呈してくる。
ほとんどが彼の主観と思しきショット。だが、微妙に遠近感が違うような気がする。まさに彼が見ている「映画」のように見えてくる。決してこちらからは手を触れることの出来ない、二次元の世界。
しかし、その世界に介入しようとしたときそれが崩れ去る、映画を観ているときのような安心感。向こうから手を出してこないという安心感をも同時に失う。
その安心感を主人公に感情移入して観ている我々をも襲う。映画に見られるという恐怖。それこそがこの映画の真のサスペンスたるところだ。
ヒッチコック、やはり上手い。