ダニー・ボイル『28日後...』2002年/アメリカ@シネリーブル神戸

高校生(16歳)のとき公開されていた、『トレインスポッティング』を観て、当時映画よりも音楽な年頃だったので、UNDERWORLDイギー・ポップの音楽に惹かれ、友人と出来たばかりのシネコンで興奮したものだ。で、肝心の「映画としてはどうだったか?」はあまり覚えていない。キャラクター造型がしっかりしていたとか、赤ん坊の死体、そしてユアン・マクレガーが一番輝いていた頃、として記憶にとどめている。その後『シャロウ・グレイブ』を観て、ダニー・ボイルを一応作家として見るようになった。(『シャロウ・グレイブ』の方が面白かった。)
さらにその後新作の『普通じゃない』を観た。まぁ、これが普通じゃなく面白くなかったわけで、たしかこの作品がハリウッド進出作だったかな。「インディーズ」と「メジャー」を2項対立させていた当時の私は、だからダメなんだよ。と思ったものだ。
と言うわけで『ザ・ビーチ』は観ていない。あまり良い評判は聞かないが結局のところどうだったのだろうか?
で、今作『28日後...』、ダニー・ボイルのことはもうあまり気に留めていなかったのだが、某サイト(http://www.h2.dion.ne.jp/~kaerufm/)でgodspeed you!black emperorがサントラに一曲提供している(彼らはかつてオリバー・ストーンに提供を以来され断った経緯がある)

いつか映画のための曲を作ってみたいとも思っているんですが、この人と一緒にやれば楽しそうだなと思える人はまだいません。オリバー・ストーンアメリカンフットボールをテーマにした自分の映画の音楽に、gybe!の感傷的なストリング(初期の作品のようです)の曲を使いたがったのですが、いつもそんな感じです。想像できるでしょう?試合の決定的な場面で、コーチが審判に異議を唱えようとすると、まさにその瞬間、クウォーターバックがボールを投げて、映像がスローモーションに切り替わるんですよ。全員の表情が変化したり歪んだりしているところにカメラがゆっくりパンして、くるくる回りながらスローモーションで落ちていくボールがクローズアップされる。そこに、gybe!の曲がドカンと入ってくるわけ。くだらないっていうのはまさにこういうことです。NO THANKS。
(メンバーのインタビューより)

と聞き(言及されている映画は『エニイ・ギブン・サンデー』のこと)、ほう、ならば観なくては。といった感じ。私もオリバー・ストーン嫌いだし。
使われている曲はアルバム"f#a#∞"に入っている"east huntings"と言う曲のcパート、"the sad mafioso"。確か。ちなみにサントラ盤には入っていないようだ。辞退したのだろう。これが序盤のシーンで大きく流れる。ダニー・ボイルGY!BEが好きなのだろう。でなければこんな音楽に合わせたような編集はすまい。そう言うわけで、最初にそれをやられてしまい少し評価がゆるくなっているかもしれないが、これはダニー・ボイルフィルモグラフィーの中で一番良い作品だと言って良いと思う。
感染すると強暴になってしまうウイルス。感染者に噛まれるなど、感染者の血液と自分の粘膜が接触してしまうと次々に感染、10〜20秒後には発症。するとゾンビのようになる。といった、もう例を挙げるまでもないくらい古典的な話。目新しいことは何一つやっていないと言って良い。ディテールなどはツッコミ出したらきりがないほどである。
それでも、この作品には『シャロウ・グレイブ』の頃にあった密室感と言うか閉塞感が後半はになるとうまく描けていて、「軍隊」がアジトにしている謎の館など、最初の「広い町に俺一人しかいないのか」という閉所恐怖症の逆のような雰囲気とのうまい対比になっている。
悪くない作品である。なんと言うかM・ナイト・シャマランの『サイン』の規模をもっと大きくした感じだ。あそこまで変ではないが。そういやGY!BEと言うバンド名の由来が柳町光男監督のドキュメンタリーのタイトルから来ていることをダニー・ボイルは知っているのだろうか。