アルフレッド・ヒッチコック『泥棒成金』1954年/アメリカ

ヒッチコックの中では佳作といったところか。中盤のカーチェイスや空撮などは見事だったが、最良のヒッチコックにみられる張り詰めた強度とでもいうべきものがいまいち足りなかったような気がする。他の作品で目に焼き付いて離れないシャンパンやコーヒーやミルクのような強さがこのフィルムからは私には感じ取れることが出来なかった。とはいっても地力があるので上手い部分も先に述べたようにある。さらに、『めまい』や『北北西に進路をとれ』を予告するようなショットもあり、ヒッチコックフィルモグラフィーとしては意味がないわけでもないだろう。