ロバート・アルドリッチ『悪徳』1995年/アメリカ をビデオで

つまり、密室劇なわけではあるが、ここで着目すべきはシーンの数も少なく、ほぼ全てのカットがチャーリーの家と庭とで繰り広げられており、例外のカットといえば、ビーチと、隣のパーティーと、公衆電話に立つ妻くらいのものであるということではもちろんなく、まさに舞台演劇の延長線のような映画であると揶揄することでもなく、徹底して映像の不在を保ちつづけた「2階」とそれに繋がっているはずの螺旋階段である。あれだけ立派な螺旋階段が設置されていながら、それを上り下りする映像がほとんどロングショットであり、決してその「上」を見せはしないと気づいた瞬間から、意識は不在の2階へと傾きっぱなし。十分「見せ場」として、あの螺旋階段という装置をふんだんに使えたはずなのにもかかわらず、というか、ヒッチコックなどを例に出さずとも、普通そうすべきであるのにもかかわらず、かたくなにそれを拒否した映画。