ロバート・アルドリッチ『攻撃』1956年/アメリカ をビデオで

攻撃 [DVD]

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一筋縄ではいかないという言葉はこういう作品、物語、映像、映画のためにあるのだろう。善悪の二元論などヘドが出ると云わんばかりに、この人間たちは自分に素直に生きている。ある意味観ている我々の欲望を掬い取る様でありながら、しかしながらそれをロングショットで捉えているような節もある。根底では誰も正義を信じていないのだろうが、それでも「正義」というものへのかすかな望みがラストのひと欠片の正義であろうが、それでも「人間」ならその正義を行使しないラストをふと思い浮かべてしまったりするものであろう。
ジャック・パランスの凄まじさというか、業とでも表現したらよいだろうか。(この作品と『悪徳』のそれとを対比するのも面白いが、止めておこう。)中隊長の頭がおかしいとすればこの小隊長の頭もやはりおかしいのだ。そのベクトルが真逆で、力学的にも合成することが不可能、和が0になるというだけである。その証拠に屍となり、ラストで隣り合って眠る顔を見るとまさに表裏一体、阿形と吽形である。戦車に腕を踏み潰される場面。あそこで彼の全ての感情、命が、『アパッチ』のマサイが最後まで抑えきったのとは打って変わって、爆発し、その後の修羅へと昇華させる。
サミュエル・フラーの『最前線物語』に比べたら(こちらもリー・マーヴィンが出ている!)、やや落ちるかもしれないが特攻のシーンのレミングのような死出の旅には、いつも何かを感じる。これは、スタンリー・キューブリックの『突撃』のあの素晴らしい突撃シーンが、滑らかな「横」の移動であるのに対して、アルドリッチやフラーのそれは我々に対して「縦」の方向に移動していく。この対比は面白いと思う。
オープニングがなかなかカッコイイと思えばソウル・バスだった。