ジョン・カーペンター『ハロウィン』John Carpenter"HALLOWEEN"1978年/アメリカ をビデオで

見えないということが、一見グリフィス以降の「全てを見せること」の快楽を追求した映画にあって矛盾したことにも思えるが、恐怖演出の醍醐味であることはいうまでも無いが、「恐怖」の本性を見せるか見せないかという選択は作家の倫理的な大きな姿勢表明であって、カーペンターの場合、見せないほうの部類に列挙される人物の最右翼である。カーペンターは隠す。暗闇に、物陰に。しかし、一番素晴らしく隠し場所は「フレーム」であるということをよく心得ていて、終いには物語の外側にさえ隠してしまう。カーペンターの作品が物語としてしばしば完結しないままエンドロールが始まるのはそういうことだろう。
ファーストカットからして素晴らしい。あのシークエンスショットがホラー映画はおろか全ての映画においての「視点」の問題に対する、快心の回答である。誰のものでもない映像などというものは本来あってはならず、「誰かが見ているもの」であろう。そして見ている映像からは常に被写体が誰かに見られている、これは誰かが見ている映像であるという疑念が渦巻く(しかしその誰かとは他ならぬ我々観客でもあるのだ!)。それが作品全体に貫かれたとき、それだけでそのフィルム体験は恐怖であり、快楽なのである。
忘れてはならないのが、ハワード・ホークスの『遊星よりの物体X』("THE THING")の映像が引用どころの次元を超えて、この作品の中で甦っていることである。もはやカーペンターがホークスを敬愛していることは言わずもがなであるし、実際その後この作品をリメイクしていることも知っている。が、この作品でのこの素晴らしき扱い。この作品の中で"THE THING"は登場人物であり、サウンドトラックでもある。