土本典昭『私家版 もうひとつのアフガニスタン 1985年』日本、2003年/『私家版 在りし日のカーブル博物館 1988年』日本、2003年 をDVDで

私家版であるし、映像資料である点をエクスキューズにしても、映像そのものから感じられる力というのは少々鈍い。センセーショナルな映像は全く映っていないし、カーブル博物館の方に関しては全くまさに資料映像を地でいくような当たり前なカットの連続。
それでもこの映像に一種の違和感を感じさせるような、これらの映像でまじめにやろうとしていることとは別種のなにかがある。それは決して目には見えないがそのことによって見える光景も違った様相を帯びる。それは土本典昭自身による語りと、その他の音である。映像には音がついていない。「音があればもっと伝わるのですが…」という語りからは別種の何かが伝わってくる。その源泉は、この作品を観たものは即座に気付くであろう。ふとした瞬間に、それもかなり早い段階で、語りの背後では常に時計の秒針を刻む音が響いているのに気付く。別の瞬間には屋外で自動車が走っていく音が聞こえる。また、紙をめくる様な音も聞こえる。「私家版」と銘打つだけあって、自宅の簡素な設備で録音したのだろう。土本氏本人よる決してプロのネレーションではない故のたどたどしさもある。そういった些細な「現在」のリアルな音が、遠くアフガニスタンの地と繋がれる。この距離感が、この小品をただの資料映像でないことにぎりぎりでとどまらせている。

もうひとつのアフガニスタン カーブル日記 1985年 (レンタル専用版) [DVD]

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在りし日のカーブル博物館 1988年 (レンタル専用版) [DVD]

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