ロベール・ブレッソン『ラルジャン』スイス=フランス、1983年 をビデオで

しまった…。迂闊に観なおすんじゃなかった。
これほどの厳しさを持ち得るには、凄まじい覚悟あったのだろう。昔観たときは、端正なフィルムで端正な美しさに息を呑んだのだったが、今観なおすと全くそう感じない。凄まじいまでに抑制されたフィルムで、ここに至るまでの道程を勝手に想像して戦慄する。
と、例えば昔観たときは「美しい」と思った、終盤の自然の中での風景が、良くないわけではないのだが、どうなのだろう、と思ってしまう。本当にこの川のせせらぎが聞こえ、バッハの調べが静かに響く「美しく長閑な」家を舞台にすべきだったのか、と思ってしまった。それは、私が先日東京日仏学院で、ペドロ・コスタの話を聞き、自然を撮ることへの戒めを胸に刻んだという、受け売りというほかない感情のせいもあるが、実際このフィルムでも、例えば病院の生命維持装置やATM、電話機、囚人への手紙を検閲する女達、といった機械的なものに比べて、ある種の厳しさが感じられないという感覚を今回は受けた。