押井守『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』1984年/日本

先日久しぶりに見たんですが、これ。やっぱり素晴らしく良い作品だと思います。私は。深夜のテレビとかでもたびたび放送しているので、年に何回かは必ず見ていますね。多分。
高橋留美子の世界(ルーミックワールド)を用いて、ジャンル映画的な枠を自覚した遊びというか、逸脱の面白さや、その今見ても一応のリアル感を感じ得る物語の世界観の設定、構造。といった、今まで何人もの人が言ってきたことはもちろん美点であり、この作品の魅力の大きな要素であることに間違い無いが、今回見なおしたとき、あまりにもその部分ばかりが強調されすぎているのではないかと思った。もちろん『機動警察パトレイバー2 the Movie 』も、名作といって良いのだが、それには無い美しさ(アニメの場合の「美しい」という言葉の用法が私には定かではないが敢えてそう言おう。)、例えばラストの埋立地に群がる無数の鳩のような美しさとは別種の、『うる星〜2』にしか無し得ない、なんとも不安定というか、切ない美しさがある。
知っている人は知っていると思うが、この作品に高橋留美子は激怒したようだ。その気持ちは判らんでもない。ルーミックワールドの「永遠に続く夏休み」感に押井がテレビ版のチーフディレクターとして、嫌悪を示したのも判る。
それでもなお、この作品には「夏休み」のせつなさ、つまり夏休みが終わってしまう、夢が覚めてしまうという儚い美しさが画面にみなぎっているのである。私はむしろこちらの方が評価されるべきだと思う。
これは他の押井作品にはあまり見られない類の美しさであろう。
そして、これはもしかすると高橋留美子の『うる星やつら』自体の魅力なのかもしれない。
この作品をはじめてみたのは夏休みとか正月の深夜にテレビでやっているのだったと記憶している。その瞬間はまさに事故であったし、発見であった。
これを観なおすとやはり『功殻機動隊』も霞んでしまう。
この作品は、深夜に発見したい映画である。