未来の廃墟

HAT神戸にロケハンに行ってきた。ここは震災後の復興計画の一環として、神戸市灘区の湾岸を再開発したものであり、その中心には安藤忠雄の設計した兵庫県立近代美術館がある。メディアに露出する彼のイメージとあいまって、なんだかなぁというイメージをともすれば持ってしまいがちだが。やはり建築物というのは実際に体験すると、まずその大きさに素直に驚く。仮に建築を芸術であるとしてしまうとして、それが巨費を投じて実際に立てられるという現象は、やはり映画制作と同様「資本主義的な暴挙」と言ってよく、それが実際に建設されたこと自体が面白いことだと思う。
で、こういう新開地の新しさ、無機質さというのが妙に私は好きで。それはすでにその「新しさ」の中に「可能性」という言葉よりももっと高い確率でその中に「古さ」や「滅び」を孕んでいるからである。つまりこれらの新しい町は可能性としての廃墟である。震災直後、六甲アイランドにあるAOIAというレジャー施設が崩壊していて、そこに夜中友達と忍び込み、崩れ賭けの当時世界最大規模だったウォータースライダーをみて、大友克洋の『AKIRA』の世界そのものだと思ったものだ。また、私が生まれたときくらいに出来たポートアイランドも今行ってみると、もうそこには不良すらいない荒廃した風景が広がっていて凄い。20数年前の風景が、化石化している。「新しい」ものは必ず「古く」なる。
わが町ながら神戸市とは面白い街だ。私が住んでいる山奥の「<元>ニュータウン」も、面白いのだがそれはまた別の機会に。