ペドロ・コスタ『骨』1997年/ポルトガル・フランス @シネ・ヌーヴォ九条

登場人物一人ひとりの顔をつぶさに見詰めるクロースアップのショット。この作品はこれに尽きるのではないだろうか。
冒頭の"OSSOS"というタイトルが画面に現れるまでの、ワンショット。女性の顔をつぶさに捉えるショット。これが全てを表している。
前後の因果関係を敢えて微妙にずらし、全てのカットがそれぞれに独立して宙に浮いたような感じになり、結果として深く記憶に染み付くのは、やはり登場人物それぞれの顔である。かといって、彼らの顔には激しい感情をの動きが現れることは無く、身体としての顔、そして同時に我々人間が最も注意を払い、特徴を識別できる顔、アイデンティティーとしての顔が静かに、そして力強く示されるであろう。結局この物語がそういうことだったのか、一度見ただけでは理解しきれず、私がいまよく覚えているのは、彼らの役名も忘れてしまいつつある今、その顔だけはしっかりと刻み込まれている。
まさに顔の記録、顔のドキュメンタリーである。
只今、『骨』というタイトルについて検討中。