塩田明彦『害虫』2002年/日本

●錯視というか騙しというかヘンなそして鋭いカッティングが何箇所も見られた。すばらしく野心的な作品だと思う。
●この「騙し」のカットが少女の思春期の混乱(あまりこういう言葉を使うのは好きではないのだが)というナラティブなもしくはそう言ったものにはいかない深層的なレヴェルとあいまって、この作品そのものを中盤以降はただの「中一のリアリティ」みたいなものには回収しきれない、次元へと導いているように思われる。
●この「騙し」がだましであると共に必ずしも騙しているわけではなくて、終盤のヒッチハイクのくだりとかになると経済的に物語を語る、というか、いわゆる省略の美学になっている。
●この騙しというか裏切りの中で私が最も美しいと思ったのはタカオを襲った男がタバコを加え煙草に火をつけようとした瞬間、サチ子の全身ショットに変わる瞬間である。ベタといえばベタな繋ぎなのだが、その画面の明度の差に目が眩み、ジッポーの火を見るよりも遥かにまぶしい瞬間であった。
●余談。宮崎あおいの存在感はなかなかだと思う。クラスメートに蒼井優がいたのはともかく、芳賀優里亜がいたのは555を途中までとはいえ、期待して見ていたものとしては変な感じがした。555での年齢設定はいくつだったっけ。