実相寺昭雄/下村善二『実相寺昭雄監督作品 ウルトラマン』1979年/日本 をビデオで

※テレビシリーズのエピソードで実相寺昭雄が監督した作品から第14話を除く、第15、22、23、34、35話を16ミリから35ミリにブローアップ、再編集して劇場公開したオムニバス。
実相寺のあおりは、けっして実は人間大の「怪獣」を大きく見せようとかそういったための技法では決してなくて、もっと形而上学的な意味を含んでいる。怪獣だけではなく、人間も子供も、地底人も、万国旗もなんでも仰ぎみるように捉える。形而上学的な意味での大きさや価値はここでは全て同等に扱われている。
実相寺のクロースアップは何を捉えようとしているのか、ここでもどんな者の顔にでもクロースアップがなされる。印象的なクロースアップの連鎖。地底人の無き目、口元の連鎖、人間の表情をナラティブから解き放ち、細部に極端に注視する。そこからは演技を超えた、肉感が、着ぐるみの怪獣の顔からも伝わってくる。しかし、もっと注視すべきは、クロースアップに限らない、実相寺特有の被写体への距離感である。実相寺の距離感はキャメラと俳優やものとの感情的な繋がりを感じさせない、しかし生々しい距離感である。どのショットをみても(ウルトラマンと怪獣の戦闘シーンは除いて)、通常の生活におけるような「適切な距離」というものを決してとってい無いように感じる。
ジャミラのパートはさすがに良かった。特にクライマックス、ウルトラマンの水攻めにあって、倒れこむジャミラの肢体が泥にまみれるショットはそれが着ぐるみであるという了解をもってしても、というより、だからこそ生々しく、万国旗を陵辱する。素晴らしいショットである。
この作品ははっきりいって出来は良くない。構成もテレビの継ぎ接ぎというだけあって、全然駄目である。しかしつまらないナレーションに耳を貸すことなく、実相寺の映像に注視すればかなりいろいろなことがみえてくるし、ウルトラマンという枠組みのなかで、いろいろなことを試していることもわかる。