ロバート・アルドリッチ『アパッチ』1954年/アメリカ をビデオで

アパッチ [DVD]

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『ヴェラクルス』もそうだったが、アルドリッチのフィルムにおける円というか環というか。銃を持った男たちはこの隊形を何かととりたがり、銃口を一気に主人公に向けて一斉に向けるという振る舞いをしたがる。まあ、獲物を仕留めるための隊形としてはいたって合理的で、当たり前なものではあるのだが、それが凄い。『ヴェラクルス』での、パンするキャメラの動きにそって、次々に銃を持った男たちが立ちあがる、場面なども圧巻だったのが、この『アパッチ』のラストにおいてそれが凝縮される。ささやかな、しかしながらアパッチ族の歴史上始めてのとうもろこし畑、直線的に植えられたはずのとうもろこしは、このラストシーンのために、円になって育ったのであろう。その中で繰り広げられる「最後の戦い」。それを不可視の位置から囲む男たち。やがてその最後の戦いは新たな世代の産声によって終止符を打たれるだろう。さすがに、そこで何故彼はマサイを殺さなかったのかはやや疑問ではあるが。
『ヴェラクルス』と通じるようなカット(例えば崖を飛び越えるカットなど)も多々見うけられ、もうすでにこの時点でのアルドリッチの作家性はある程度みうけられる。なかでも気になるのはアルドリッチは決して切り返しを用いて会話のシーンを撮ろうとしないということと、アクションのつなぎでは悉く一呼吸時間を飛ばしているということである。これから見ていく作品で、それらのことも見極めたいと思う。