ロバート・アルドリッチ『地獄へ秒読み』"TEN SECONDS TO HELL"1959年/アメリカ・イギリス をビデオで

ゴダールの『勝手にしやがれ』で、ポスターが出てくるやつ。
ジャック・ベッケルの『穴』であるとか、アキ・カウリスマキの『マッチ工場の少女』だとか、そしてロベール・ブレッソンの諸作だとか、ドラマを越えて迫ってくる人間の行為そのものが前面に押し出されている類の映画というものがあると思うが、その列にこの作品も入っている。無論今列挙したような作品がそうであるように、決して単なるフェティシズムに陥ることもないし、かといってそういう「労働」が人間性を剥奪しているなどど、鼻息も荒く告発するような下品さもない。これはロベルト・ロッセリーニの撮ったドキュメンタリー『白い舟』からも読み取れることである。
さて、ここまでアルドリッチ作品を見つづけると、ジャック・パランスというスターのペルソナが大分把握できてきて、筋は読めてくるのだが、それでも彼の存在感に注目せざるを得ない。まさに『攻撃』と表裏を成しているといえるだろう。時や場所が違っていればどちらにでも転んでいたかもしれない。
アルドリッチのフィルムでは人を殴るカットが何度かあるが、あれはどれも素晴らしい。決して殴る瞬間というのが映っていなく、それは銃弾が見えずに人が倒れていくのとにている。
あと、この作品ではとくに無かったが、人が落下する映像というのもすこぶる面白い。黒沢清の奇妙な落下も少なからずアルドリッチからきていると感じた。