溝口健二『雨月物語』1953年、日本 をビデオで

「夢」から覚め、改心して、くにへそして我が家へ源十郎が帰ってくるシーンの素晴らしさは、このシーンが古典中の古典であること以上の力を未だに持っている。主のいなくなった家をキャメラが見回す。左のほうへつらつらと目をやりもう一度右に目をやった瞬間のおな奇跡とも言える幻。終わった後もう一度巻戻してこのシーンを確かめてしまったほどだ。視界の外で、スタッフや役者があわただしくそして精確に仕事をしている様が目に浮かぶ様で涙が出る。
出世した弟の藤兵衛が女郎宿で落ちぶれた妻と再会するシーンも、当然素晴らしい。ここぞという場面で溝口が見せるロングテイクは、キャメラワークなどの撮影技術の美学と、俳優の演技のパッションとその持続を逃がさないための編集・演出の美学、それらフィルム的要素すべてが結実したものである。
この古典は今も生きている。

雨月物語 [VHS]

雨月物語 [VHS]