ジム・ジャームッシュ『コーヒー&シガレッツ』アメリカ、2003年 @テアトル梅田

コーヒーと煙草が映画的世界においてある種の役割を果たしてきたことはもはや言うまでもないことであるが、ジャームッシュのこの小品の数々はそういった役割からは少しずらされ、無為の時間素晴らしさをその持続時間と共に表現している。つまり熱いコーヒーが冷めるまで、1本の煙草に火をつけそれをもみ消すまで、それらの時間は何かのためにあるのではなく、ただただそこに緩やかに横たわる。その時間そのものが目的になる。そういったアンチドラマの武器としてコーヒーと煙草はピストルよりも、自動車よりも、男と女よりも強い。二人の人間とコーヒー煙草があれば映画は撮れると宣言している。