ガス・ヴァン・サント『ジェリー』アメリカ、2002年 をビデオで

このフィルムが捉えているのは光とその運動である。『エレファント』の最初のカットに繋がるかのような、明度の変化を丁寧に収める。リュミエールのときから映画に愛されて来たモチーフの一種である雲のダイナミックな変化を捉えた映像も悪くはないのだが、最初から分かりきったような動きを虚しく示すだけで、その本来の豊かさを示しきれていない感じを受けるのに対して、夜明けの白い闇の中、徐々に対象の色が滲み出すように分かってくる場面は素晴らしい。
『エレファント』でも観られる、ある種のフラットさへの追求が前作であるこれのほうが、より顕著な形で表れていて、つまり、映像の持つパースペクティブはいわゆる「遠近法」というものとは絶対的に別種なもので、非人間的であるということを突き付ける。連なる丘の群れを俯瞰で捉えられたカットは、その陰影の乏しさゆえ、思わず書割ではないのかと疑うほどであるが、(たとえ実際に書割であったとしても。例えば鈴木清順のように)これが世界であり、映像はいかなるパースペクティブも持たずただ示すのみである。

ジェリー デラックス版 [DVD]

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