ジョン・カーペンター『ゼイリブ』アメリカ、1988年 をDVDで

不思議な眼鏡をかけると世界の「真の姿」が見える、私が実はそうだったと信じたい世界が見える。これは映画の役割の1つであり、我々が映画に寄せる欲望の1つであろう。
しかし、その不思議な眼鏡が私たちに見せつけたのは、「眼鏡をかけろ!」、「嫌だ!」の押し問答から繰り広げられる濃密過ぎる拳によるコミニュケーションである。もうフィストファックと言ってしまってもよいぐらい。この過剰なコミニュケーションはその後この2人が中心となって活躍することを確信させるのだが、そんな相棒もあっさりとクライマックス直前にワンカットで殺されてしまい、敵に屁を垂れてやることすら出来ない。これはおそろいのサングラスで街を行き、宿をとり、として行くまさしく兄弟であった2人が、安易に「新製品」のコンタクトレンズに替えてしまった時から決まっていたのではないだろうか。サングラスはただの敵を見極める道具以上の象徴的意味を帯びていたのにもかかわらず、それをあっさり放棄してしまうのだから。
その潔さがカーペンター節である。相棒があっさりと退場するのは当然である。

ゼイリブ [DVD]

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