ロバート・ロドリゲス『レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード』メキシコ/アメリカ、2003年 をDVDで

何故原題の"ONCE UPON A TIME IN MEXICO"をそのまま使わなかったのかは知らないが、こういったことは今に始まったことではないので、まぁ良いだろう。
このフィルムには夜がない。正確にはラストに夕暮れが少し訪れるのだが、決して漆黒の闇が表を覆うことはない。昼と夜ではなく、外と内がある。街にあふれる原色の饗宴を色鮮やかに映し出す太陽はすべてを照らし出す。しかしここにある建物の壁は厚く、窓の数も抑制されている。部屋の中は陰が支配する空間である。窓からのぞく豊かな光も陰の輪郭を強調するために、光り輝けば輝くほど闇の深さを強調するだろう。オープンカーとそうでないリムジンとの違いは屋根と外壁があるかないかという決定的な差によって、隔てられている。ジョニー・デップが奪い乗りこオープンカーと、マルケス将軍が乗っているリムジンの内部に渦巻く闇を見比べてみよ。この映画では光と闇は昼と夜のように相容れないものではなくて、外と内壁1枚で隔てられ、交錯するものであり、両立可能なものである。
しかし夕闇が迫りつつある今、彼はもう殺しの世界には戻ってこないか、絶対に抜け出すことが出来ないか、二項対立の世界が迫るのだろうか、その後の世界を光を失ったジョニー・デップはどのように見るのだろうか。