ジャン=リュック・ゴダール『ゴダールの決別』フランス/スイス、1993年 をDVDで

観た映画を言葉で言い表すというのはやはり不可能であると思う。それは作った本人たちやすべての映画を観尽くした神のような存在にでもである。ある映画を観た「私」についてそれを精一杯につぶさに物語ることしかできない。正確に映画について語ることが出来たとしたら、映画など不用であろう。
言葉を操り、繰りだし、組み合わせ、反復させ、書き、発声し、タイピングすることを思考するというのならば、例えばゴダールによるもののような映画を観たとき、頭に?胸に?脳に?心に?生じている現象はそういう意味での思考を超えた経験である。そもそも世界、宇宙にあって経験するとはこのようなことではないのか。
フィルム1コマ分の映像を正確に記述するにはどれほどの時間がかかるのだろうか。ワンカットの映像を記述するには、ワンシーンは、1本の作品は。
だから映画があるのだ。
全く具体的な映像、音響についてなにも書いていないが、さすがにこれはマズいだろう。
今回(最低なことに!)はじめてステレオ環境で観た/聞いたのだが音響設計が凄まじいこと今更ながら驚いた。単純な音の左右への振り分けがこれほどまでに凄まじいとは(すぐさま『ヌーヴェル・ヴァーグ』をいい音響で観直さなければ。東京では「爆音ナイト」なるイベントをやっているようで羨ましい限りだ)。

ゴダールの決別 デジタルリマスター版 [DVD]

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