サム・ライミ『スパイダーマン3』アメリカ、2007年 @日劇PLEX

確かに『3』には『2』のドック・オクの触手も、それに扮するアルフレッド・モリナの素晴らしい表情もないのだが、それでもハリー・オズボーンのジェームズ・フランコはいる。
そもそもストーリーテリングがうまくいっていないのは、今作に始まった話ではない。『2』だって、かなりのものである。しかしそれを補って余りある、活劇と、エモーションと、一部の役者の表情がある。だからこそまるでアルドリッチのような核に準ずるような物体をただ湖の底に沈めて良しとする『2』のラストに、嘲笑混じりで、悪趣味的に笑い、楽しむのではなく、やはりアルフレッド・モリナの瞳に免じて心から涙を流したのだ。そういう意味で確かにサンドマンやヴェノムにドック・オクに匹敵するようなリスペクトを捧げることは私には出来ないのだが、この『スパイダーマン3』にはハリーがいることによってこのフィルムと物語は救われる。『2』からもう感じていたことなのだが、トビー・マグワイアよりもジェームズ・ブランコの方がスクリーン上で存在感を示している。
だから今作で最も良かった格闘シーンはニュー・ゴブリンが絡んでいる個所でることに違いない。唐突な流れのため急にジャンプ漫画のように彼が「仲間」になるシーンもそれでもその個所には涙を流さずにいられなかったのは、彼の表情があったからに違いない。スパイダーマンとニュー・ゴブリンが共闘している様は確かに感動的であり、アクションの躍動感も並々ではなった。
だからそのわりには彼の死も「時間の都合」のようにさらっと終わってしまったのも惜しい。彼ならばそれこそもっと大仰な流れと演出でも耐えられたろうに。
このシリーズの主役はやはり、ハリー・オズボーンだったのだ。