松本人志『大日本人』日本、2007年 @シネマスクエアとうきゅう

確かに笑った。おもしろかった、のだが、「ネタバレ」なしで何かいうのも難しい。ので以下は観てない人は読まないほうが良いかと。
中村雅俊の歌が流れ出してからはぜんぜんだめで、もうはっきりと最悪といってしまってもかまわないかもしれない(当然「笑った」ことも確かなのだが、笑えればいいというものではない。「泣け」ればいいというものではないというのと同様に)。ラストの既視感漂うヒーローコントは最悪で、松本人志の笑いという視点から見てもよろしくないとおもう。これは端的に「逃げた」と私は解する。ラストに安牌を持ってきて、誤魔化してしまった。物語としても、映画作品としても、最後に勝負を避けてしまったように思う。
たとえばCGのくだりの密度の薄さに、それをもってひどいというつもりは毛頭ない。が、家でテレビを観ているような感覚になってしまいもしたのも確かだ。ちゃんと観なくてもよいのだな、という気分。
それまでのくだりは評価できるように思う。「松本人志」がやる必要があるかは疑問ではあるが。たとえばコンビニやうどん屋に入るくだりの中には入らず外の窓から覗き見るといったフェイクドキュメンタリーの手法も堂に入っていて、原付を追いかけていくワンカットのくだりは評判どおり素晴らしかった。大佐藤の乗る原付を追いかける、道の両脇には反対派(?)の看板や落書きが並ぶ、原付を一度抜き、併走する、そして原付を降りて門を開けさせる、そこでキャメラ禁止を言い渡される、そのまま敷地内に入ってゆく大佐藤、カーブミラーにすばやくキャメラが向くとそこに大佐藤の後姿が。これはキャメラがよかったといえばそれまでなのかもしれない。にしても、ロケーションによるこれらのくだりは「松本人志の世界」が現実に侵食してきているのではないか、といった感じで、この方針で行けばフェイクドキュメンタリーのような変化球でなくとも、堂々としたフィクションを取れるのではないかと思う(私は世代的にも松本人志への期待が大きいのだ)。