神代辰巳『濡れた欲情 特出し21人』日本、1974年 @ラピュタ阿佐ヶ谷

このフィルムに限ったことではないが、神代の描く世界は螺旋階段のように、元来た場所に戻ってくるような、回転運動を繰り返している。
それは冒頭の怨み節を謡いながら商店街の路地を一周したり、場末の呑み屋の周りを一周しては一杯あおっている男の姿がそれを体現しているし、連れ込み宿の回転ベッドなどはそれを発明したのは神代であるとまことしやかな都市伝説を吹聴しても良いくらいである。
私のような浮き世の人間には耐え難いこの永劫回帰の世界を、神代は遊戯のように超人の視点で見ようとしている。神代のフィルムから感じ取るある種の「愛しさ」は何か手の届かないところにある者を見守っているような、神話的な世界だ。
神代・姫田のダイナミックな役者との遊技が、ふっとその呼吸を変える、濡れ場。濡れ場とミュージカルシーンはナラティブなフィルムの進行を止め、エモーションを焼き付けることに従事するという点において似ている。遊技から勝負に変わる、監督、キャメラマンと役者の遊戯から、人間対人間の勝負に変わる。