第3回ガンダーラ映画祭 ノーインテリジェンス〜映画界のラスプーチンと呼ばれて @下北沢 LA CAMERA

Aプログラム

山本剛史のポテンシャルに笑う。
幼なじみの監督と役者のスリリングで切ない関係を何のてらいもなく、愚直に描いていて、これってバンドとかやってるとだんだん本気になってくると関係がこうなっちゃうことあるよなあ、と思った。
彼らの作る本編はあまり好きになれない、彼らの(敢えて言うなら批評的、戦略的)スタンスが好きになれないのだが(このことについてはこのブログで『天然コケッコー』について2日にわたって書いたときに触れた)、これは去年のガンダーラ出品作に引き続いて、少し共感できる。

  • 井土紀州『人に歴史あり 18歳の暗黒』日本、2008年

骨太な実録犯罪分析からフィクションへの飛躍への踏切板になるような「18歳の暗黒」の「発見」、そこから後半のブラックジョークとでも言うべき展開へ。
現実の手触りから出発し、それを大切にしつつもクールに扱う冷静さ、井土紀州の作法をみた。制作過程がみれた気がして得した気分。
新作が本当に楽しみ。最高の予告編。

好き嫌いの趣味判断になるのだろうか。
やっていることはともかく(いや、結構面白いことやってるし、私もピカチュウ欲しいとか、カラスの群かっこいいとか思った)、その撮り方、編集の仕方が全然駄目で、そういう批評の仕方は傲慢なのかとも思うが、そういう姿勢を揺さぶるほどの強さはまだ持ち得てない。

  • しまだゆきやす『日本イスラーム化計画』日本、2008年

あれだけ延々とモスクの中の実景を音楽とともに示しておいて、その後のヒステリックブルーをどのように理解すればよいのか。ギャグなのかヤケクソなのか。
ともかくなにも起こっていない作品なので、これ以上なにも言いようがない。
Bプログラム

諸事情により、客観的な批評が出来ないのだが、思ったより面白かった。ラスト、ここから何かが始まる感じがした。ラストの切り返しがぐっときた。

  • 真喜屋屋力『フロム・パラダイス』日本、2008年

まずい状況なのになにか冷静な感じがよい。

今回一番笑った。藤原章を思わせるセンス。だが決してエピゴーネンではなく、オリジナル。なんか共通のリアリティを持っているという感じ。
ある意味マンガよりも面白かった。それはマンガでは恣意的な絵柄も映画では現実の人間が演じるしかないということが決して窮屈になることなく軽やかに演出しているからだろうか。原作者の持つ余裕だろうか。

ラストの「彼女」の顔の凄さ。『ラザロ』を思い出した。
堂々たる作りなのだが、作品内で監督自ら指摘しているとおり、まだ解決していない。その迷い自体がきちんと映されているのだが、いかんせんまだなにも起きていない。締め切りとかがない限りドキュメンタリなぞ「完成」しないのだろうが、まだこれは始まりの始まりではないだろうか。
無責任な立場から言うと続けてほしい。
多分いつかこの続きが観れるんじゃないかと思いつつ。
このような批評に耐えうる作品だと思うから、やや辛口。今回のガンダーラの中で一番本気だったと思う。ひりひりする感じ。