オーソン・ウェルズ『オセロ』モロッコ、1952年 をビデオで

タイトルクレジットが入るまでのオープニングシークエンスの葬送の素晴らしさが、もはやシェイクスピアなど関係ないと宣言している。なかでも奥手のオセロを担いだ列と、手前の十字架を持った聖職者の列のコントラスト、どちらもシルエットに近い明度で映し出されてて、目に見えるその姿の大きさはそれこそ雲泥の差で示されている。パンフォーカスの素晴らしさよ。
キプロスでのトルコとの戦の場面の編集が素晴らしく、大砲を始めとする様々な対象が、人物の運動と視線のやり取りの間に侵食してくる。これらの編集に形而上学的な意味を持たせることはたやすいだろうが、単にリズムをつけているだけであるともとれるし、センスの問題であるといってしまった方がしっくり来る気がする。
もうひとつ忘れてはならないのが、オセロによって殺される直前の妻デズデモーナの顔を捉えたアップ。自らの純潔を訴える彼女の顔は、このフィルムのどんなカットよりも強くクロースアップで捉えられている。ドライヤーの『裁かるるジャンヌ』のアップを思い起こさせるようなこのアップが彼女の美しい死によりそう。シーツをかぶせられ首をしめられる彼女の顔のフォルムはぞっとするくらい美しい。

オーソン・ウェルズのオセロ [VHS]

オーソン・ウェルズのオセロ [VHS]