相米慎二『お引越し』日本、1993年 をビデオで

相米慎二の作品を観て思うのは、語れないこと、言葉では言い表せないことがあるから映画は存在するのだ、という強い確信である。相米の作品ではしばしば「子供」を中心とした「物語」が繰り広げられているように一見すると見えるかもしれないが、じつは「大人」と「子供」との区別は厳としては描かれておらず、子供も大人も同じように苦しみ、享楽的に、過ごしている。ただ、問題に対する対処、逃避のしかたを大人は心得ていて、子供はそのすべはおろかその問題をきれいに言い当てる語彙すら未だ持っていないのだ。だから子供は行為するしかない。そのために映画は寄り添う。
風呂場の扉のガラスを突き破る、桜田淳子の血染めの拳に戦慄。

お引越し デラックス版 [DVD]

お引越し デラックス版 [DVD]