ジム・ジャームッシュ『ナイト・オン・ザ・プラネット』アメリカ、1991年 をビデオで
映画から物語という「癌細胞」を取り除いてやること。ジャームッシュが近作の『コーヒー&シガレット』でも分かるように、オムニバス形式をとるのは必然であろう。話芸というか小噺というか。いかに一個のシチュエーション、一人一人のキャラクターから「映画」を引き出すか。そこからうまれる時間と空間の官能的な様。
ルームミラーごしのジーナ・ローランズとウィノナ・ライダーとの切り返しの美しさ、ロージー・ペレス扮する"YOYO"のダイアローグの響き、それぞれの瞬間は1本のフィルムの中から、独立して輝き出し、逆にその輝きは、この1本のフィルム全体を照らし出すだろう。
その意味でもヘルシンキ篇がカウリスマキへの目配せが過ぎていたせいか物足りない印象だった。おそらくヘルシンキ篇に必要だったのはトム・ウェイツの音楽ではなかったのだろう。
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