成瀬巳喜男『妻』日本、1953年 をビデオで

成瀬の映画で、私がグッときてしまうのは林芙美子原作のものが多いので、林芙美子による物語が良いということなのではないかと思ってしまうが、やはりそうではないだろう。映画表現として成瀬がフィルムに刻印しているものが確かに素晴らしいのである。
成瀬のローケーション撮影は素晴らしい。『浮雲』もそうだったが、「屋外を歩きながら話す2人(男女問わず)」を撮らせたら成瀬の右に出るものはいないのではないかと思う。高円寺界隈を歩く妻と愛人、シチュエーションからして戦慄すべきシーンに、映像としての強さを与えているのは、ロケーション撮影による翳りとなまなましさにちがいない。