ロバート・アルドリッチ『北国の帝王』アメリカ、1973年 をビデオで

汽車のような巨大な塊が走るという運動はまさに奇跡そのものではないか。線の上を愚直に疾走する塊を男たちはそれに緩急をつけたり時には力ずくでて停止させたりしながらも、それは決してその走行を諦めはしないだろう。彼らはもう既にそれに乗り込んでいるのだから。
その線上を走行する塊の上に乗りこんだ男たちは、煙を吐く鉄の塊同様、力学的なパラメータを予め設定されていて、それをただ演じる。それが狂気にみえるのは仕方ない。汽車という乗り物自体が狂気なのだから。つまりこの作品は極めて純粋な運動だけで成り立っているということが出きるだろう。先日言及した一連のジャームッシュ作品とほぼ同様な意味で。この幾何学的な映画の前には道徳は不粋であり、不純である。

北国の帝王 [VHS]

北国の帝王 [VHS]