アルノー・デプレシャン『そして僕は恋をする』フランス、1996年 をビデオで

傑作『キングス&クイーン』でもそうなのだけど、デプレシャンは私にとって感想・批評を書きづらい作家である。何を軸にして書いて良いか分からなくなるし、これだけははずせないシーン、カットを数個かチョイスするのも非常に難しい(そういう意味で『エスター・カーン』は比較的書きやすい映画だったといえるだろう)。決定的なカットがないのだが、全体を通して見ると非常に有機的に構築されてて要らない個所はまずない。だから本気で文章を書こうとするとこの映画より長い分量が必要である(本当はすべての映画がそうなのだけど)。
映画について書くよりも映画について友人と語る、そういう方法のほうがデプレシャンには向いているような気がする。
今回観なおしてみてモノローグでミラン・クンデラについて言及している個所を「発見」して、『キングス&クイーン』で強く感じたクンデラっぽさを確信した。無論この作品もクンデラの書く小説と同じ息吹を持っていることは間違いない。というか、この作品も随分前に観ているので意識下にずっとあったのかもしれないが。