デイヴィッド・クローネンバーグ『ヒストリー・オブ・バイオレンス』アメリカ、2005年 @新文芸坐

クローネンバーグは少年時代から見ていた作家の一人で、「好き」な監督の一人なのだが、「クリーチャー」や「残酷描写」以外で映像的に彼の指紋をなかなか自分の中で見出せない監督だな、という印象をずっと持っていて、今回も途中までは暴力シーンでしこたま殴ったために鼻がえぐれているというような描写で、「きたきた!」と思ってしまうような感じだった。
どうも演出家としてのクローネンバーグはハッとさせるような何でもないシーンをあまり撮っていないのではないかという疑念が再び沸いてきそうになった。
しかしあのラストシーンを観れば、やはりクローネンバーグも偉大な現代の映画作家の一人であると確信させらた。前作の『スパイダー』の面白いんだけど、どうも腑に落ちないなぁという感じもすべて解消された気分になった。
あの「一仕事」終えて「家」に帰ってきた、トム/ジョーイとその家族との緊迫したラストシーン。ダルデンヌ兄弟の『ある子供』のラストシーンと響きあう。