サミュエル・フラー『デンジャー ヒート/地獄の最前線』フランス、1989年 をビデオで

オープニングクレジットもさることながら、それが終わった後のファーストカットが凄まじい。やはり偉大な映画は、もうワンショット観ただけでそれとわかる。やはりファーストカットは重要だ。サミュエル・フラーのフィルムはどれも最初でがっちりと我々の心をわしづかみにする。
そのファーストショットはこうだ…
キリスト教の祈りを唱える老人の顔のアップ、キャメラは次第に左へ寄っていくとその老人の後頭部には銃がつきつけられていて、銃を突き付けている軍服をきた男は三つ数えたらシャッターを切れという。
その後に続くショット、展開、主人公の女性がそれをとることが出来ない〜…、も当然のことながら、やはりこの最初のカットが凄い。
フィリピンの社会情勢を見事に消化していて、ドキュメンタリ映像を交えたりと、現代映画としても見応えのあるものになっているのだが、やはり活劇としての魅力が素晴らしい。
誘拐された子供を助けに行くときめ、銃を借りる、そのショットの次はもう既に「ママのカジノ」に乗込んでいて、白服の一人をまさに襲撃する瞬間から始まる。このスピード感、ダイナミズムは名人芸といったところか。
さらに映画館での銃撃戦。映画内でのギャングの抗争と映画館の中での銃撃、爆発がピンポイントでモンタージュされる。これは活劇として面白いのはもちろんのこと、もっと形而上学的な、映画における暴力への一考察であるとも考えられるのだが、どうか。ところでこの映画館で上映されている映画、何という作品か誰か教えてください。フラーはこういったシネフィル的というか他の作品への言及をするようなタイプの作家だとは思っていなかったので少々驚いたこともあったので。
これらのシーンは鈴木清順を想起させる。