ジャン・ヴィゴ『新学期操行ゼロ』フランス、1933年 をビデオで

寄宿学校での反抗がテーマであるにもかかわらず、何ともいえぬ幸福感に包まれたフィルム。
若々しいという表現が相応しいのだろう。やりたいことを躊躇せずに何でもこの掌編の中に詰めこんでいるという感覚で、監督がとか、役者がとかではなく、このフィルム自体が若々しい。
冒頭からの件で、あ、これはサイレントなのかと一瞬思ったが、次のシーンからはトーキーになる。このサイレント映画風のシーンによってこのフィルムの雰囲気が完全に決定される。ラッパを鼻に突っ込んで吹くところで一瞬クロースアップが挿入されるのがこれはもはや古典に属する作品とは一筋縄には語れないことが宣言されている。落書きがアニメーションになって動きだすシーン、チャップリンのような動きをする新任教師などを見て、実験的であるとかいうよりも、本当に屈託なくやりたいことをやっているという意味で自由さを感じる。
しかしなによりも当然、(あの素晴らしい校長を含めた)少年たちの躍動感である。あのクライマックスの布団、枕の羽が舞う中誇らしげに行進する少年たちのスローモーションの素晴らしさといったらない。
それらすべてのシーンが決してその面白さが、実験的、技術的なレヴェルに淫することなく、エモーショナルな表現としてフィルムに定着している。
40分強の作品だが、かなり雑多な要素が楽しく詰めこまれた作品。