ジャン・ルノワール『獣人』フランス、1938年 をビデオで

映画というものに、というか映画の欲望に忠実に撮られたフィルムである。
鉄道は言わずもがな、原初のモティーフであるが、とにかく機械と言うのはとても映画と相性が良いように思う。この運動する機械の映画的魅力を余すところ無くルノワールは捉えている。何回も映し出されるジャン・ギャバンと汽車。ゴーストライドで見せる風景。単純に生々しい映画のもつ魅力が迫ってくる。本当にこのフィルムでルノワールが撮りたかったのは鉄道ではないだろうか。
そしてそのメカニカルかつ躍動的な汽車の傍ら、まさに欲望する機械のごときジャン・ギャバンが壮絶に遂げる最期のショットは衝撃というほかない。序盤での汽車の故障が彼に伝播したかのような苦悩の後、それは起こる。
ジャン・ルノワールが良く用いる構図、屋内シーンで中央よりやや左手奥に扉があり、その扉を行き来しながらワンショットで1つの会話を撮り切る。これについてもう少し考えてみたい。

獣人 [DVD]

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