リチャード・フライシャー『スパイクス・ギャング』アメリカ、1974年 をビデオで

倒れたリー・マーヴィンに始まり、倒れるリー・マーヴィンに終わるこのフィルム。まさに彼へのオマージュのような映画だであるが、彼だけでなく撃たれた者の身のこなしが悉く素晴らしい。
撃たれた者はなにも言わずただ身を横たえる。これは死者への敬意である。名も無いものだけではなく、主人公の2人の友ですら、一言も発せぬまま死んでゆく。そして皮肉にも人生そのもののように彼らを導き立ちはだかるスパイクスですら、やはり一言も発さない。
そして最期には主人公ですら一言も発さず鉄道の脇で死んでゆく。
オーヴァーラップの使い方が非常に良く、主人公が夢を見ているという何箇所かのシーンが実に的確で、このフィルムの流れを引き締めている。
銃撃といい、オーヴァーラップといい、このフィルムに限らず、リチャード・フライシャーの演出はまさに教科書のように、シンプルで的確で、そして素晴らしい。やはり鋏は使いようである。
何とも救いの無い悲惨な物語のようであるが、どこか序盤の希望をそれでも引きずってしまうような感じがする。フィルムが終わってもなお持続する希望に満ちた幸福感は何だろうか。
死にゆく主人公が最期に観た希望に満ちた出奔のシーンのオーヴァーラップは、決して過去のものではなく、今目の前に現前する現在のものであるという映画の原則ゆえであろうか。

スパイクス・ギャング [DVD]

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