神代辰巳『死骸(しかばね)を呼ぶ女』(「恐怖劇場アンバランス」より)日本、1969年-1970年(1973年放送) をビデオで

テーブルクロスを引っかく女の爪あとが、鉄道とモンタージュされる。斜線というモチーフだけのナラティブにはほとんどかかわりのないカッティング。
しかし、その音が強調された女の引っかきにその心理が克明に演出されている。街を歩く主人公カップルの捉えかた、バストショットで不安定なキャメラで追いかける。この映像を観て、最初本当に神代の作品なのだろうかと半ば半信半疑だった気持ちが吹き飛ぶ。
やはり音を伴った演出が際立つ。ホラーものの良いところは、やはりその音と映像に通常よりもより多く神経を張って注意深く観客が観る、ということだろう。
二十日鼠の車輪をカラカラと音を立てる、執拗な描写。
そしてクライマックスでの無音。素晴らしい。
この作品もまた、神代が作家としてだけでなく、演出家としても極めて優れた監督であるということの証明に他ならない。